明治の女

少し前になりますが、阪神大震災から何年〜というニュースを見ると、父方の祖母のことを思い出します。

祖母のお葬式の朝、テレビに映っていた横転した(っていうのかしら、あれ)高速道路。今まで外国の地震とか、関東大震災とか、時間も距離も自分からは遠い所で他人事でしか考えたことがなかったような出来事が、今、この瞬間、自分が生きている日本で起こっているんだ、って思って、たとえば教科書の中に載ってしまうような、歴史の中に生きているんだって思ったのを覚えています。
それが、祖母のお葬式の朝でした。

祖母は明治の女性でした。
詳しい生い立ちは聞いたことはなかったけれど、私の父は東京の深川出身で、「おばぁちゃんは、関東大震災東京大空襲も経験している」と言っていたので、祖母も下町に長く住んでいたのでしょう。

父は結婚した時、祖母と同居するつもりだったようですが、祖母に「あんたの世話にはならない」と言われ、(なぜそんなことを言ったのか、家族内アンタッチャブルなので聞いてません。母も知らないようで、父のみぞ知る)同居しなかったいきさつがあったので、お正月やお盆には必ずおばぁちゃん家には行くのだけど、なんとなく距離があって、特別仲良しというわけでもなく、二人での思い出もありません。
ただ、おばぁちゃん家でやることもなく、みんなでテレビを見ている時にタバコを吸うおばぁちゃんを見て「かっこいいなぁ」って思っていました。“タバコを吸うおばぁちゃん”って
自分のおばぁちゃんしか見たことがなかった。私は幼いながらも粋だなっ、東京の人だなって思ってました。

亡くなった後だったか、その直前だったか、すでに病に倒れていた時、祖母が元気な頃に日本舞踊のお稽古をしていた写真を見つけました。そんな趣味があったとは全然知らなかったので、教えてもらいたかったなぁって思って、お父さんとおばぁちゃんがけんかなんかしないで、一緒にみんなで住んでいろいろと影響うけたかったなぁって、それは今でも思うこと。

昔の人の生きる気力っていうのを思うと、とても尊敬するし、今の私には到底及ばない。
満員電車で辟易している私には、関東大震災東京大空襲も戦後も乗り越えられるような、気力きっとない。

そんなことを毎年、阪神大震災のニュースを見て思い出します。
そういえば、最近お墓参りさぼってるなぁ。